青猫文具箱

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著作権法上、本の引用・要約・目次をブログに書く時気をつけること。

本のまとめと著作権について

個人ブログやNAVERのようなまとめサイト又はSNSで、本の内容をまとめただけの記事を見かけると「著作権的にどうなんだろう?」と気になってました。営利目的でなければ大丈夫そうだけど、アフィリエイトの広告+本をコピペしただけのような記事には「これ引用の範囲超えてるし無断転載じゃないの?」と、ルール違反にもやっとすることもあったり。

例えば「本の要約サイト | flier(フライヤー)」は「出版社に利用許諾を得て要約を提供」してますが、企業ならまだしも個人が利用許諾を得るのって現実的には難しそうですよね?管理者に問い合わせても返事がない場合もありそうだし。

そんな訳で「本のまとめ」を個人ブログが掲載する場合に発生する著作権法的なあれこれについて調べてみたよ、というのが本記事です。

今回記事の情報元は、文部科学省など可能な限り公的機関にしています。あとで何度も読み返せるよう、わかりやすさとシンプルさを優先したため、誤解を招きやすい部分もあると思うので、自分で深く勉強する際はリンクを辿って確認をお願いします。

本のまとめと一言にいっても、

  • 引用型:本文をそのまま抜き出して掲載
  • 要約型:本の内容を要約して掲載
  • 目次型:本の目次をそのまま抜き出して掲載

を取るパターンを見かけることが多いので、引用、要約、目次に分けています。

 

引用について

著作権者は公衆送信権(著作権法23条。無断で公衆に送信されない権利)を持つため、本の内容をブログに掲載する場合、"原則"として著作権者の許諾が必要です。許諾を得ずに無断転載した場合、権利侵害となるおそれがあります。

ただ、あらゆる場合に著作権者の許諾を得るのでは、SNSなどで誰もが表現活動を行う世の中、許諾のための手続きで著作権者を煩わせることになりますし、著作権者に不利益な言及、批評を行う場合などには、許諾が得られない事態もあり得ます。

このため、著作権者の許諾を得ずに本の内容を書くことが可能な"例外"のひとつとして「引用」(法第32条)があります。

  1. 公正な慣行に合致すること,引用の目的上,正当な範囲内で行われることを条件とし,自分の著作物に他人の著作物を引用して利用することができる。同様の目的であれば,翻訳もできる。

著作物が自由に使える場合|文化庁

文化庁は、私的使用のための複製(第30条)、図書館等における複製(第31条)と同様、引用(第32条)を「著作者等に許諾を得ることなく利用できる場合」として列挙してます。

引用の条件を満たす「公正な慣行」として「正当な範囲内」の判断基準については、写真パロディ事件(第1次上告審 昭和55.3.28)といった判例の蓄積から、文化庁は次の4点を上げてます。

  1. 他人の著作物を引用する必然性があること。
  2. かぎ括弧をつけるなど,自分の著作物と引用部分とが区別されていること。
  3. 自分の著作物と引用する著作物との主従関係が明確であること(自分の著作物が主体)。
  4. 出所の明示がなされていること。
著作物が自由に使える場合|文化庁

1.は必然性、2.は明瞭区分性、3.は主従関係、4.は出所明示です。

他人の著作物を借りるためには、借りるための相応の理由が必要です(必然性)。ブログ記事に彩りを添えるため、アイキャッチとしてアニメのキャプチャ画像を掲載するだけであったり、自分が好きな本の一節を、コピー&ペーストで引っ張ってきただけで内容に言及しないのも、必然性の説明は難しいです。

また、少なくとも自分の著作物と他人の著作物が明瞭に区分され、引用部分の明確化がされていることも必要です(明瞭区分性)。第三者が見たとき、それが誰の創作物であるのかが明確化されていないといけません。

加えて、自分の著作物が主体であり、引用する他人の著作物は従たる存在であることが求められます(主従関係)。本の内容を数ページに渡り転載した上で「~と思いました」と一言二言を添えたぐらいでは、主従関係がなく、引用とは認められません。書評(レビュー)や読書感想、案内紹介(ブックガイド)的な「自分の考え」部分が必須になります。

最後の出所明示について、文化庁のページでは

その方法は、それぞれのケースに応じて合理的と認められる方法・程度によって行われなければいけないとされていますが、引用部分を明確化するとともに、引用した著作物の題名、著作者名などが読者・視聴者等が容易に分かるようにする必要があると思われます。

文化庁|著作権なるほど質問箱「引用する場合、出所の明示はどのようにすればいいのでしょうか。」

としており、引用元について単にAmazonリンクを貼れば大丈夫、というわけではないのがわかります。著作物の題名、著作者名などがわかりやすく書かれている、という点で、まとめサイトの中には、出典を小さく目立たない文字で表記していたり、出典を明記せずそもそも引用の条件を満たしていないという悪質な事例もあります。

引用の条件は大して難しいことではないので、著作権者に敬意を払いながら、引用を使って行きたいです。

 

要約について

要約についても、文化庁のページに解説があります。

(前略)また、要約は、著作物の内容をある程度概括できる程度にした著作物のことをいいますが、この要約を行う行為は、一般に翻案権(第27条)が働く行為とされており、著作権者の了解なしにはできません。ただし、ごく簡単に内容を紹介する程度の文書であれば、著作権者の了解は必要ないと考えられています。

文化庁|著作権なるほど質問箱「他人の論文を自分の論文中に引用する場合に、要約して利用することも許されますか。」 

翻案権とは、著作物に創作性を加えて別の著作物を作る行為で、要は、小説の映画化やアニメ化、二次創作、文書の要約などです。翻案権も著作権者の権利で、これらの行為を行うには著作権者から許諾を得る必要があります。

本を要約するのも(翻案権)、それをブログに掲載するのも(公衆送信権)、原則として著作権者の許諾が必要ということですね。

ただ、例外として、上記の文化庁見解のとおり「ごく簡単に内容を紹介する程度」なら「著作権者の了解は必要ないと考えられている」としています。

同じ文化庁のページで「許諾なしであらすじのネット掲載は可能か」の問いに対して、

A.どの程度のあらすじかによります。(略)2~3行程度の極く短い内容紹介や(略)キャッチコピー程度のものであれば、著作権が働く利用とは言えず、著作権者の了解の必要ありません。

文化庁|著作権なるほど質問箱「最新のベストセラー小説のあらすじを書いて、ホームページに掲載することは、著作権者に断りなく行えますか」

と書いてますし「あらすじ」レベルの内容紹介なら問題ないとのこと。ただ判例を見ると、この「内容を紹介」する程度についてはだいぶ余地がある印象です。

例えば、コムライン・ディリー・ニュース事件(東京地裁 平成6.2.18)では、

著作権法27条所定の翻案には、現著作物を短縮する要約を含むところ、(略)。要約は、これに接する者に、原著作物を読まなくても原著作物に表現された思想、感情の主要な部分を認識させる内容を有しているものである

裁判所ホームページ|知的財産裁判例|平成4(ワ)2085(pdf)

つまりは「現著作物を読まなくても主要な部分を認識させる」要約には問題がある、としてます。

また、コメットハンター事件では、ビジネス書の要約サービスで会員を集め、毎月本の要約を電子メールで送る有料サービスを無断で行った会社が、著作権者に訴えられました。本を読まなくてもわかる翻案、と見なされ原告側の勝訴で終わっています(【参考】要約コンテンツの誘惑に駆られたら速読本舗事件を思い出そう - 法廷日記

これらを踏まえると、文化庁見解と判例の中間地点「ごく簡単に内容を紹介する」から「現著作物を読まなくても主要な部分を認識させる」の間で、要約型の本のまとめブログは行われる必要があるわけです。

 

目次について

内容を極めて短い表現で列挙しただけの「目次」も、同じように著作権法は適用されるのかって思いません?本の目次全部を掲載しているブログって時折見かけます。

例えば「50歳から幸せになるための15の法則」と言う本があったとして、15の法則が書かれた目次を全部掲載したらアウトな気がしますし。

ただ目次については、残念ながら探した限り判例は見つけられませんでした(というか最高裁以外の裁判判例情報がヒットしすぎた)。いくつかのサイトを見ると、目次が著作権の適用を受けるかは、弁護士など専門家の間でも特に意見が分かれるようです。

公益社団法人著作権情報センターのQ&Aでは、

Q. 市立図書館で雑誌の表紙・目次・記事のダイジェストをデータベース化し、ホームページにアップロードしていますが、問題はありませんか。

A.(略)雑誌の目次は雑誌に掲載されている記事の内容を工夫して簡潔に表現し配列したものであって、単純に配列されたもの以外は、表現、選択、配列に創作性が認められるでしょう。この場合は、雑誌の目次自体も著作物として著作権法上保護されます。

【出典】Q&A インターネット・ホームページ | こんなときあなたは? | 著作権Q&A | 公益社団法人著作権情報センター CRIC

正直、素人判断だと難しい領域です。とりあえず確実なのは、良識の範囲内で必要最低限に留めましょう、てことですかね。

 

おわりに

個人ブログの場合、よっぽどの有名サイトでもない限り、本人やプロバイダーへの削除要請手続、裁判コストを考えると、許諾を得ない全文要約の個人アフィリエイトブログであったとしても、現実、訴えられることは滅多にないと思います。ファンがブログ運営者や広告主に通報するとかの方が現実的じゃないかなーと。

過去TPP交渉の流れで著作権が話題となったように、著作権法は親告罪となっている部分が多く、これって著作権者の利益になるファン活動や広告活動をグレーゾーンで守るための要素もあるわけですが(二次創作のコミケ文化然り)、その趣旨を踏まえるなら、著作権者の利益を害さない範囲で、ルールというよりモラルとして守っていきたい領域という感触があります。作者に敬意を払う、てことですね。逆に言えば、著作権者の利益にならない、還元されない利用は自粛されるべきじゃないかな、と書いて〆です。