青猫文具箱

青猫の好きなもの、行った場所、考えた事の記録。

本棚に忍ばせたい大人の女性向け漫画オススメ20選。

大人の女性向け漫画が読みたい。落ち込んでいる時に癒されたり励まされたりするような、青春時代を思い出してキュンとときめくような、そんな漫画が読みたい。そして仕事で学校で忙しない毎日、息しづらくなった時のお守りとして本棚にそっと忍ばせておきたい。

なんて願望が湧いてきたので、本棚に忍ばせたい大人の女性向け漫画オススメ20選を書きました。順番はつけられないので、ランキングではなく並列でのオススメです。単巻読み切りや、連載ものでも数巻で完結済のものを中心に、ぎゅっと好きを詰め込んでみました。ノスタルジーが今マイブームなので、少し古めの作品も紹介します。

 

港町猫町(作者:奈々巻 かなこ)

魔女も猫も寂しがり屋で、とかく不器用な生き物。

港町猫町 (フラワーコミックスα)

港町猫町 (フラワーコミックスα)

 

坂道だらけの一風変わった港町。ときおり猫たちは少年の姿で現れて、寂しさを抱えた「魔女」と呼ばれる女の子たちと緩やかに心通わせていく。悩みを抱え港町にやってきた女の子と、自由と孤独を愛しながらも寂しさを知る猫が主人公の連作短編。

滑らな毛なみと温もりが寄り添って、揺り籠のような優しい日々に癒されていく女の子たちが愛しい。これを傷の嘗め合いと見るか、一時の羽休めと見るかは難しいけれど、でも、足を止める時間は大切です。頭で考えずに感情で寄り添える作品。

 

満ちても欠けても(作者: 水谷フーカ)

ラジオのアナログな音が好き。

満ちても欠けても(1)

満ちても欠けても(1)

 

きょうび、何もかもがデジタル化された世の中で、ラジオはアナログなんです。0と1との間の優しい音が、そのまま空気にのって「あなた」の元へ。

ラジオの現場を舞台に、恋、もしているけどそれよりもっと、ヒューマンにハートフルな感じのオムニバス。ラジオ好きな「みんな」があつまってラジオをつくって、その音が「あなた」に届くんだよ、なメッセージを受信しました自分。恋愛以外でも"何か"を対象にした好き語りは、いつだって心浮き立ちます。

漫画に漂う雰囲気のまろみが、疲れた体にジュワッと染み込むあたたかさで心地いい。

 

strawberry shortcakes(作者:魚喃キリコ)

言葉にできない息苦しさで、涙が出そう。

strawberry shortcakes (FEEL COMICS)

strawberry shortcakes (FEEL COMICS)

 

東京で暮らす4人の女性たちが織りなす、等身大ガールズロードムービー。

漫画というより叙情詩。行間に解釈の余地があって、幸せと不幸が行ったり来たり、エッシャーの騙し絵的感覚が楽しめます。これは多分「ジャンル:恋愛」ではなくて、もっと普遍的で解決策のない「ジャンル:生き方」かなぁ。ジレンマに共感して、何だか息苦しい。その時々の読者の感情によって、ヒロインが幸福にも不幸にも見える。

真夜中に独り暗い部屋で、洋画の恋愛ものを見て浸ってる感、味わえます。

 

こうふく画報(作者:長田佳奈)

こうふく画報 (主任がゆく!スペシャル)

こうふく画報 (主任がゆく!スペシャル)

 

大正時代を舞台に、市井の人々の幸せな日常を描いたノスタルジックな短編連作短編集。

新婚さんから片思い、阿吽の呼吸の夫婦が来たかと思えば、恋に至らない大人と子供の友情まで。で、全部ほんわかしてきゅうっと胸が苦しくなったり。なのに切なくはない。和菓子のようにまろい甘やかさ。

「ささやかな日常の幸せ」を集めて濾過して濃度をあげると、こんな作品ができるのかもしれない。

 

縫い裁つ人(作者:池辺葵)

唯、あなたのためだけに生まれ死にゆく服をつくるひと。 

繕い裁つ人(1)

繕い裁つ人(1)

 

静かにミシンを踏み針を進める洋裁店の店主と、服を求めてやってくる人々との、絵画的に静かな物語。

職人肌で頑固ジジイな女店主が、服の背景を紐解いて、採寸し、裁断し、卸した服を着せかけるまでの一連の流れが丁寧に描かれていてたまらない。人々が抱える物語はありふれたもので、でもつまらないとは思えない。 絵も淡泊ながら味わい深いというか、素朴で優しくどこか寂しげな空気。

ちょっとひとり時間ができた時に、静かな空間でゆったり楽しみたい。池辺葵先生は、これ以外の読み切り短編ものも、短編とは思えない濃度で楽しめてオススメ。

 

リストランテ・パラディーソ(作者:オノ・ナツメ)

あざといぐらいの老紳士萌えに、あえて乗りたい夜がある。

リストランテ・パラディーゾ

リストランテ・パラディーゾ

 

「オトナの"小さな恋のメロディ"」のコピーが最高に素敵。ローマの小さなリストランテを舞台に、全員老眼鏡紳士な従業員と、その客たちが織り成す群像劇。

メインは、自分を捨てた母親を訪ねてリストランテにやって来たお嬢さんが、優しい老眼鏡紳士にときめいて、それが恋かどうか確かめる話。老紳士の色気をあざと過ぎるくらい狙ってますが、立ち姿やしぐさが粋だし、ストーリーもレトロクラシカルな装いでおしゃれ。つまり萌えは偉大ってことです。

 

今日の恋のダイヤ(作者:草川為)

今すれ違って2度と会わないあなたが、私の恋のキューピッド。 

今日の恋のダイヤ (花とゆめコミックス)

今日の恋のダイヤ (花とゆめコミックス)

 

見知らぬ4人が、空港を行き交う一瞬に影響を与え合い、前に進んでゆく連作短編。

鬱々とした気分でコンクリートを歩いていて、でも何かをきっかけに見上げたら綺麗な青空が広がっていた、みたいなキラキラとしたラブコメディ。誰もがみんなありふれた不幸に見舞われる日があって、でも同じくらいちょっとしたきっかけで幸せの扉は開くんだよ、ていう応援歌のような爽やかさ。

バトンで物語が繋がっていく、オムニバスらしさもとても好き。

 

ずっと独身でいるつもり?(作者:おかざき真里)

ずっと独身でいるつもり? (FEEL COMICS)

ずっと独身でいるつもり? (FEEL COMICS)

 

雨宮まみ先生の同名エッセイを原案にしたオムニバス漫画。結婚してない私って「かわいそう」なの?

焦りぎみに結婚や恋愛に手を突っ込んで、色々あって女3人。ご飯食べながら「幸せってなんだろーね」に解を出すラストシーンが、綺麗で優しくて勇気もらえる。「結婚てなんだろーね」じゃない「幸せってなんだろーね」なんですよ。

東京タラレバ娘(作者:東村アキコ)の描く痛々しいアラサー女子よりも、こっちの方がリアルで温度感があって、優しい正義。だからこそ読み終わった後「幸せになりたいな」て思えるんです。アラサーとかアラフォーとか、年齢や結婚に囚われてる時に。

 

Love,Hate,Love.(作者:ヤマシタトモコ)

この恋を文字で表現するには、私の経験が足りなすぎる。 

Love,Hate,Love. (FEEL COMICS)

Love,Hate,Love. (FEEL COMICS)

 

バレエの夢を断念した28歳処女と52歳大学教授の恋。

年の差ラブ!なんて叫びが許されない無菌空間的ピュアラブストーリーに、床ゴロゴロしたい。何これ。無音字幕の映画のような、静かで詩的ででもモダンな恋物語。ちょ、職場の50代部長に色気を錯覚しそうなくらい、知的でオトナな教授がカッコいい。ほんと何これ。

ゆるやかなベランダ越しの2人が、初々しくて可愛い。恋の仕方を知らない女と、恋の仕方を忘れた男の、探り探りの恋の始まり。ほんとにほんとに何これ。好き過ぎる。 

 

サヨナラフラグ(作者:マキチヒロ) 

時々無様で滑稽で、最高にいじらしく愛おしいオンナたちの、人生のワンシーン。

サヨナラフラグ (FEEL COMICS)

サヨナラフラグ (FEEL COMICS)

 

「いつかティファニーで朝食を」のマキチヒロ先生作品の初作品集です。

描かれているのは、「サヨナラ」のフラグが立つか立たないかの瀬戸際。とにかく痛い。身につまされる痛々しさ。

でも、いろんなフラグを立てたり折ったりスルーしたり、ハッピーエンドじゃないかもしれないけれど、自分的ベストエンドへの分岐点を選んでいく主人公の選択が、それぞれ爽やかで明るい。読んだ後、エネルギー充電された気分になります。いい。

 

おふろどうぞ(作者:渡辺ペコ)

言葉にならない胸の苦しさが、お湯のあたたかさでゆるんでほどける。

おふろどうぞ

おふろどうぞ

 

心も体も裸になれば、ちがう明日が見えてくる。そんな湯けむりオムニバス。

渡辺ペコ先生、瞬間風速的には「東京膜」が大好きなんですが、おふろどうぞの方が、角度の違う楽しさをゆるりと読めて読み返し率高い。

涙交じりの塩しょっぱさもあるけれど、お湯のあたたかさでほどけちゃうので重たくありません。家族風呂や不倫風呂、連れ込み風呂まで様々にあるけれど、ラストのサボり風呂が最高に頷けます。真面目なサラリーマンが、仕事サボってお風呂入っちゃう話なんですが...ムッチャわかるわその気持ち。

 

千代に八千代に(作者:大澄 剛)

学校のお勉強は何の役にも立たない、わけでもなく。

千代に八千代に アクションコミックス

千代に八千代に アクションコミックス

 

勉強はできなくても素直で天然の千代さんと、生真面目な国語教師の物語を皮切りに、国語、算数、理科、英語、家庭科…、教科をテーマにした連作短編集。

各話のリンク感がそれとなくて良い。絵柄通りにほのぼのふわっと、素朴でちょっと物足りない位の穏やかな日常が、のびやかで前向きな主人公たちの目線で綴られていて、不思議と味わい深いんです。

なんといっても表題作の千代さんと先生の関係がすごく好み。特に先生の愛の形が。ちょっと待ってくださいかんざしとか何それもだえます。内心想像すると床ゴロゴロ転がりたくなる。

 

あたらしいひふ(作者: 高野雀)

恋はほぼなし。友情も多分ない。でも心に刺さる、ありふれた女と服のお話。

あたらしいひふ (FEEL COMICS swing)

あたらしいひふ (FEEL COMICS swing)

 

 

黒い服ばかり選んでしまう地味系、モードな服をカッコよく来こなすデザイン職、コンサバ服に囚われる受付嬢、可愛く盛ることで武装するギャル。おんなじ会社で働く、見た目も価値観も違う4人が、ふとすれ違う時に胸よぎること。

「人が見た目じゃなかったら、私はこんなに悩まない。」モノローグで語られる、それぞれの服にまつわるエトセトラが、じわじわと自分にも侵食して来てちょっと辛い。でも、ラストはほんのり優しくて好き。

女の人にとってオシャレとかメイクって、身を守る鎧であり戦うための武器でありそして、てことを再実感します。それであたらしい服を買いに行きたくなる。

 

ピースオブケイク(作者:ジョージ朝倉)

恋に堕ちると女はすごく面倒くさい、けど?

ピースオブケイク(1) (FEEL COMICS)

ピースオブケイク(1) (FEEL COMICS)

 

"a piece of cake"…お茶の子さいさい、朝飯前、簡単なこと―。彼氏と別れて仕事も家も変えた20代女性の恋愛叙事詩。案外簡単に終わって始まる愛とか恋とか。

女の面倒くささとか関係のドロドロさとか、己に火の粉を浴びなければ、それはもう一種の娯楽。恋愛脳も、愛すべき女の性なわけです。

でも途中から、面倒くさいのは女だけじゃないとバケツの水をぶっ掛けられたような不意打ちに目が冴えて、そう、男も女も深く知れば知るほど面倒なものでしたね、という気づきが得られます。恋愛に浸りたい時に。

 

くらしのいずみ(作者:谷川史子)

恋というより愛の、ほんわか夫婦の物語。

くらしのいずみ (ヤングキングコミックス)

くらしのいずみ (ヤングキングコミックス)

 

谷川史子先生の繊細で柔らかな筆で紡がれるしみじみ家族ストーリー。人生いろいろ、夫婦もいろいろ。

自分の心の起伏次第で、ほろりとくるシーンが違ったりしてちょっと面白い。ストーリーで魅せるというよりはシチュエーションでじわっとくるタイプ。あまりに綺麗すぎて、こうありたい、よりも、ガラスケースに大切にしまって鑑賞専用な夫婦愛ですが、同じ空の下こんな夫婦もいるんだろうなぁ。いたらいいなぁ。「仮面夫婦」のエピソードがとんでもなく好き。

 

娚の一生(作者: 西炯子)

かたい殻に守られた、柔らかな部分を暴くよう。

娚の一生(1) (フラワーコミックスα)

娚の一生(1) (フラワーコミックスα)

 

恋愛成分をランプの火にあてて、世間体や生き甲斐や「女の幸せ」を蒸発させたら残ったもの、かな。 元来したたかな女の不器用さ、が繊細にゆるやかに描かれてます。

かたい殻に守られた、柔らかな部分を暴くようで、見てはいけないものを見ちゃった気分。 超エリートなのに女としての不器用感満載なつぐみさんは、中二病的なこじらせ女子だよなぁ。自意識とプライドのせめぎ合いというか。

そして海江田教授の存在は、ファンタジー過ぎて逆にリアルな女を浮き彫りにする空想上の生き物っぽい。男から見た、一角獣の乙女的な。

 

路地恋花(作者: 麻生みこと)

あー恋がしたい、

路地恋花(1)

路地恋花(1)

 

京の路地裏。職人たちの愛情だったり思い出だったりの短編集。 しんみり、ほっこり。そんな言葉が似合う優しい恋とか愛が詰まってます。

幸せな部分だけを切り取った訳じゃないのに、恋の辛い部分までがどこか優しくて、読了感はほろり。 ベタですが、銀細工職人の光生くんが鋳る見守りの物語が好きかなぁ。

光生くんのですね、ふにゃん、として見えて「俺が作ったもの纏った君」的独占欲にぞくっとする。それでも上手な風花さんとか、床転がりますわー。あー恋がしたい。あったかいココアを入れて、雨だれを聞きながら読みたい本です。

 

Real Clothes(作者: 槇村さとる)

辛くても、やっぱり仕事が好きな、レディたちへ。

Real Clothes 1 (クイーンズコミックスDIGITAL)

Real Clothes 1 (クイーンズコミックスDIGITAL)

 

働くって楽しい。おしゃれするって楽しい。女でいるって最高に楽しい。 百貨店のふとん売り場でから花形婦人服売り場に異動となった販売員・天野絹恵(27歳)が、働くこと、着ること、女でいることを、悩んで進んで壁にぶつかって乗り越えて、走り抜けていく話。百貨店を巡るお仕事漫画でもあります。

流行でなく似合う服を探してるんだ、とか。初めて何かを「売った」時の喜びってこんなだった、とか。近すぎて忘れていたことに気づいて目が覚めたみたいな、そんな気持ちになります。仕事とおしゃれを思い出したい日曜夜に。

 

HER(作者: ヤマシタトモコ)

この世で一番、可憐で獰猛なけものたち。

HER (FEEL COMICS)

HER (FEEL COMICS)

 

少年ジャンプ的「友情・努力・勝利」とは対偶の、女の本音と不安と救い。女ならすべてでないけど必ずどこか刺さるところのある、不思議な6編オムニバス。

この「悲劇のヒロイン的な不幸を私は負っているけれど、あの子よりは幸せよね」感が可憐で獰猛なけもの的女子の生態を現していて、好きだなぁ。それでいてレモンの清涼感もあって、読了後胃がもたれない。

職場で可愛いと評判のあの子を、アラサー社員が嫌い、キャリアウーマンな上司が持て余し、ベテランのアラフォー幹部が苦笑いする、あの空気感が楽しめます。

 

ベル・エポック(作者:逢坂えみこ)

ベル・エポック 1 (クイーンズコミックスDIGITAL)

ベル・エポック 1 (クイーンズコミックスDIGITAL)

 

芸能雑誌の編集者・鈴木綺麗を取り巻く人々の群像劇 。

当時のキャッチフレーズは「雑誌の仕事をとおして、すべての働く女性に共通する悩み、喜びを描いた大人気ワーキング・ロマン」。1991年連載開始の作品です。もう一度いいます、1991年。

なのに全く古さがない。作中に出てくる公衆電話もポケベルも、古さはなくてむしろ一周回っておしゃれレトロ。そして描かれる主人公の悩みも、不変で普遍でなんかもう、人間って成長しないね、バカだね、て思う。でもそれが愛おしさでもあり。この頃アラサーとかアラフォーなんて言葉はなくて(多分)、なのに悩みは今と同じにあったのだろうなーとか。

タイトルのベル・エポック(フランス語で「良き時代」)も余韻があっていい。

 

おわりに

それぞれの作品のテーマは、恋だったり愛だったり友情だったり、はたまた人生だったり。主人公の年齢も、ティーンからアラサー、アラフォーなど幅広めに、むしろ年齢は理由にならないよね、てエピソードのもの多めです。あれです、乙女だから恋するんじゃなくて、恋するから乙女なんです(つんくさんオマージュ)。深夜のテンションで読んでも、ほんわかした気持ちで眠りにつけるような読後感のもの中心。そんな、気に入り20冊のオススメでした。

アニメ化や実写化作品はできるだけ選外にするようにして選んでます。orange(作者:高野苺)、失恋ショコラティエ(作者:水城せとな)、脳内ポイズンベリー(同右)あたりの実写化はキャストの影響もあって結構好きだったかなー。ちょっと前だと、逃げるは恥だが役に立つ(作者:海野つなみ)とか。アニメ化だと、3月のライオン(作者:羽海野チカ)、君に届け(作者:椎名軽穂)、NANA(作者:矢沢あい)あたり原作オマージュ感があってよかったです。

最近読むのは女性向け漫画が中心だけれど、たまには初心に立ち返り、少女漫画で痛々しいくらいの青春を読みたい気もするなぁ...。あ、少年漫画で、熱い友情モノとかスポーツものに没頭するのもいいかもしれない。意外と何歳になっても漫画って、楽しいものです。\