青猫文具箱

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映画「シン・ゴジラ」感想文。

周回遅れですが、「シン・ゴジラ」見に行きました。鑑賞直後、情報のシャワーに頭ふわふわした余韻も冷めやらぬまま、しっくりこなかった部分の解説や解釈を、インターネットの情報漁って楽しんでました。

こういう時思うんですけど、インターネットめっちゃ楽しい。「ですよねー!」とか「なるほどそうくるか」みたいな情報との出会いがあると心浮き立つしかない。初見では気がつかなかったネタを自分の目で確かめたくて、二回目のシン・ゴジラも行きました。多分三回目行っても飽きないと思う。楽しい。

それでですね、楽しい!と思う映画を見た時ってやたら何か語りたくなるもので、だから自分も、シン・ゴジラの感想を書きます。当然のごとくネタバレしてます。ごめんなさい。

 

映画久しぶりだった上に、ゴジラもエヴァンゲリオンもシリーズ途中に脱落した人間なんですが、でも良かった。前半のポリティカルフィクションぽさも良かったし、後半のいろんなものが噛み合ってうまく回っていく展開にもワクワクした。某政治家たちが交わした「任せた」「幹事長なら任せろ」なやり取りは涙腺決壊ものでした。「必ず帰ってこい」とか言わないのがいいよね、間延びしちゃうもんね。

前半は、会議また会議でお互いの腹の中探り合ってるうちに後手に回り、街への被害は拡大、ただ逃げ惑うばかりになってて、やたらリアルだなーと思ったものです。自分の知ってるお役所こんな感じだなと。個々は優秀なのに組織としてはめっちゃとろい。

それが後半になって、人材不足でのっぴきならなさ極まったせいもあるんでしょうが、物事がパタパタ決まっていく様は爽快です。誰もが適材適所に優秀さをいかんなく発揮して、希望ある?ラストまで一直線な感じでした。心地良い。

そして、何よりゴジラが神々しい。火に包まれた東京の街を背景にゴジラが闊歩するシーンと、シルエットっぽくゴジラと東京の全景を横から写したシーンは、ゴジラに詳しいわけではない自分ですら「おおっ...!」となりました。BGMも相まって、ちょっと怖いくらいに美しい。畏怖を絵にするとこんな感じなんだと目が潤んだ。

 

鑑賞前チラ見した情報だと、政治家や官僚がまっとうに優秀に活躍する展開がファンタジー過ぎてリアルじゃない、と言われてた気がするんですが、自分は情報量に圧倒されてそこまで思い至ることもなく。

というかこの映画、一般人目線削ぎ落としてるので、フレーム外では普通に政府叩かれてた気がします。自分が都民で避難する立場なら、不眠不休で国際社会の圧力回避したとか与かり知らない事情なので、わけもわからず避難させられるし、「国は何やってるんだ!」とラスト以降も恨み続けただろうと思う。次の選挙があれば絶対に政権党には票入れない(そう考えるとあんま希望のあるラストじゃないな、あれ)。

映画時間で「金帰火来(国会議員が金曜の夜に選挙区に帰り、週末に地元での政治活動をして火曜に東京に戻ること)でゴジラの被害を免れた」なんてセリフもありましたし、交通網が麻痺してたことを考えると、政権党が首都で対応に追われる一方、野党の先生方って地元に足止め食らって、そこで地元民の信頼集めることもしてただろうし。次の総選挙って政権与党に厳しいんじゃないかなとか。選挙は東京だけで決まりませんしね。圧倒的に東京以外。いやプロパガンダで弔合戦前面に出して大勝出来るのかなー、妄想捗る。

 

フレーム外といえば、二回目見に行った時に初めて気がついたことがありまして。

根回しに縦横無尽の活躍を見せた泉ちゃんこと泉政調副会長はポジション的にわかるんですが、アウトローで世渡り下手設定の巨災対(巨大不明生物特設災害対策本部)のメンバーも、飄々と根回しをこなすじゃないですか。あれ、一回目見た時は地味に違和感あって、「そんな調整能力あるならこいつら普通に出世するんじゃね?」て気がしたんですが、二回目じっくり追ったら、「〜と次官と審議官にいってください」「臨時局長にお願いして〜」とか、出身母体の省庁に調整投げてるんですよね。

「パイプがある」「根回し済」みたいな表現、その人脈すごい!で終わっちゃいがちですが、電話の向こうにはそれをさらに繋ぐ人がいるんだなと。フレーム外で頑張る人の気配を感じて、なんだかふわっと胸の奥があたたかくなったのです。この映画世界、賞賛とは無縁の場所で、どれだけたくさんの人が動いたんだろう。

巨災対の立ち上げ、霞ヶ関にツテを持つ泉ちゃんが「首を斜めに振らない(曖昧な回答をしない)やつを集めてやる」といってアウトローなメンバー集めてくるシーンも、どういうルートを辿れば政治家の泉ちゃんが、霞ヶ関の出世コースから外れた官僚を拾えたのかなと考えたんですが、一番あり得るのって、それぞれの省庁のそれなりに偉い人が、はぐれ者でもちゃんと評価していて、ここぞと推薦したんですよね。世渡り下手で平時は燻ってるけれど、有事を任せるに足りうる存在だって。そういう想像するとまた楽しい。

シン・ゴジラ【オリジナル・トートバッグ付き】 (e-MOOK)

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何かで、オタク(腐女子?)は空白を妄想で埋めたがるって読んだことがあるんですが、今その気持ちよくわかる気がします。考察と妄想で自分の中のシン・ゴジラ埋めたさがある。長くなるのでここら辺で止めるんですが、情報量の多さと、でも意図的に削ぎ落とした情報の空白っぷりが楽しい映画でした。フレーム外のドラマきっとたくさんあって、多分スピンオフとかあったら追っちゃう。要はまた行きたい。