以前読書ブログをやる上での書籍の引用や要約について、著作権的に気をつけることを勉強した記事を書きました。
著作権法上、本のまとめ(引用・要約)をブログに書く時気をつけること。
最近、TPPの著作権の非親告罪化のニュースを見て、そろそろまたおさらいしようかなと。そんなわけで、ネット上で公開されている政府資料をメインの情報源としつつ、漫画のコマ画像をブログ掲載する場合の著作権的なことについて、勉強結果を記事にしました。
漫画の画像は著作物か。
漫画の画像引用に関しては「脱ゴーマニズム宣言事件」の判例を読んどけってのが定番ですが、読んだことがなかったので「裁判所ページ」の裁判判例情報で検索して探してみました。
【参考】裁判所ホームページ|知的財産裁判例|平成11(ネ)4783(東京高裁)、平成9(ワ)27869(東京地裁)※いずれもpdf
漫画のコマ画像の引用が認められる範囲について、明確な基準が示されたと言われる判例です。引用については後段で触れるので、ここでは、
- 「漫画の画像は著作物として扱われるか?」「はい、扱われます」
- 「漫画であっても、絵の部分について言及がなければ文のみしか引用できませんか?」「いいえ、漫画は絵と文が不可分一体となった著作物であり、引用の正確を期すためには絵が不要とは言えません」
のふたつだけ頭に入れておきます。
漫画のコマ画像をブログ掲載する方法について。
漫画のコマ画像は著作物という前提で、個人がブログ掲載する方法を思いつくまま列挙します。
著作権者の了解を得るのはわかりやすいかと。あと、著作権者がブログ転載可(著作権フリー)としている場合や、後段で詳細に触れますが引用の条件を満たす場合も問題ないと思われます。著作権保護期間が切れた場合ってのもありそうですが、漫画の世界だと時期尚早ですかね。
では、無断転載は即アウトか?といえばそんなこともなく、現在の著作権法上の大部分は著作権法123条で「告訴がなければ公訴を提起することができない」親告罪となってるため、著作権者のお目こぼし狙いなブログもある気がします。外から見ると、著作権者の了解があったか判断つかないですし。
余談ですが、著作者人格権(法第18~20条)の侵害は部分的に親告罪じゃなくて非親告罪なんですねー(亡くなった場合)。著作者人格権の中に同一性保持権(法第20条)が含まれるので、漫画のコマ画像の改変はつまり…おおぅ。
改変しきっちゃった場合(例えばへたくそなトレース画)も、元の漫画とわかる場合は翻案権(法第27条)が働くため、著作権者の了解が必要になります。
一部修正増減を加えただけということであれば複製、創作性を加えて二次的著作物を作成したと言うことであれば、変形又は翻案になると考えられますが、いずれにしても元の漫画の著作権は働きます(後略)
【出典】文化庁|著作権なるほど質問箱「人気漫画を真似て描いた絵を、加工して自分のホームページに載せることは、著作権の問題がありますか。」
翻案としては、二次創作(パロディ)も著作権者の了解が必要な行為ですが、ファン行為であること、宣伝行為ともなることから著作権者が黙認している場合が多いと言われます。 あまりに多すぎて訴える行為の採算が合わない、てのもあると思いますが...。
引用の条件を満たす漫画のコマ画像って何ぞ。
著作権者の許諾を得ることなく、ブログ掲載を可能とする「引用(法第32条)」について、文化庁ページでは、
【出典】著作物が自由に使える場合|文化庁
【出典】同上
- 他人の著作物を引用する必然性があること。
- かぎ括弧をつけるなど,自分の著作物と引用部分とが区別されていること。
- 自分の著作物と引用する著作物との主従関係が明確であること(自分の著作物が主体)。
- 出所の明示がなされていること。
一言でまとめると、1.は必然性、2.は明瞭区分性、3.は主従関係、4.は出所明示。
2.明瞭区分性と、4.出所明示はわかりやすいと思うんですが、1.の必然性と、3.主従関係は迷いそう。
1.必然性については、著作権法の条文で明記された「報道、批評、研究その他の引用の目的」に合致すれば引用可と判断できる一方、単なる挿絵、アイキャッチ的使用がダメなのは想像がつきます。でもその間の、例えば「○○名言集」で画像引用ができるかというと、判断怪しいんじゃないかなー。構成や感想でどれだけオリジナリティ出すかですね。
3.主従関係は、脱ゴーマニズム宣言事件でも論点となった個所ですが、上記の裁判所判断(平成11(ネ)4783)を読むと、
文章が、商品価値や情報量において、漫画カットに劣るとしても、そのことをもって、文章が漫画カットに対して、主従関係に立てないというものではない。
漫画カットであることから、直ちにそれに対して文章が「主」と認められるためには、文章の方が量的に見て圧倒的なボリュームがなければならないというものではない
と、質的・量的に画一的に主従関係が判断できるものではないとしてます。結局は「個別に裁判してみなけりゃわからない」わけですが、文章と漫画という、性質の違うもの同士を掛け合わせるのでしょうがないですね。
不安な人は著作権者から許諾を得るか、「引用箇所は自説を引き出す呼び水でしかない」レベルの引用に留めるのが安全です。批判や複数頁にわたる引用は、主従関係がはっきりしずらいですからねー。
おわりに。
というわけで勉強したことレポートでした。間違いがあったら教えてください!
正直、法律をもっとシンプルにしてほしいとか、ガチガチに守りすぎるとデットストック出てくるんじゃとかいろいろあります。「引用の範囲か否か?」なんてやるよりは、出版社が正式に個人利用に門戸を開いて、幾らか利用料でも取った方が、Win-Winになれそうですけどねー(すでにやってるとこあります)
今回勉強にあたってこの2冊を参考にしました(漫画のコマ画像の著作権に詳しく触れてるわけではないので注意)。

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あわせて、自分のブログで「これってグレー?」と感じたところを修正したりしてます。商標権的に判断つかなかったところもついでに修正をば。日々精進です。