小説家になろうといえば「厨二病男子が異世界転生(or転移)。神様にもらったチートスキルを武器に、可愛い女の子ハーレムに囲まれながら俺TUEEEEしつつ成り上がる」みたいな印象があるかもしれません。それはあながち間違っていない(確かに人気ある)。
でもなろう、最近は料理ものやスイーツもの、グルメものもかなり鉄板になってます。
自分がちょっと前に秋川滝美先生の「居酒屋ぼったくり」(書籍化でなろう版は削除)にはまり、料理ものを漁っていた頃からすでに、なろう料理ものの粒ぞろい感はありました。そして、料理ものの人気作「異世界居酒屋「のぶ」」「異世界食堂」が続々書籍化されていったあたりからは、料理ものはなろう鉄板になった気がします。
そもそも、なろう界隈で異世界召喚されたり転生する場合、料理スキルは鉄板です。異世界では食文化が遅れていて、煮込み料理やハンバーグやスイーツ和菓子なんて作っちゃったりして「何これおいしい…!」「こんなもの食べたことない!君は天才か!?」「毎日僕のために味噌汁作ってくれ」とかワッショイされる展開。
実際には、火力調節がつまみひとつでできちゃって、すでに捌かれた肉や魚があって、コンソメの素とかだしの素とか便利調味料があるキッチンにどっぷりつかった現代人にどこまでできるか謎だけどね!
ということで、自分が語りたいだけの小説家になろうで異世界料理&スイーツ小説を楽しむおすすめ。料理モノからグルメ探求モノ、メインではないのにやたらご飯が美味しそうなモノまで、たまに異世界じゃない現代料理ものも挟みつつ、バラエティ豊かな作品集をお届けします。
- 異世界食堂
- スウィートドリームファクトリー
- 可変迷宮
- おひとりさまでした。 ~アラサー男は、悪魔娘と飯を食う~
- 異世界料理道
- メニューをどうぞ
- ただいま、おかえり、いただきます。
- 騎士団付属のカフェテリアは、夜間営業をしておりません。
- ラスダン手前のよろず宿
- 異世界居酒屋「のぶ」
異世界食堂
小説家になろう界隈で、どんな偏食読みでも絶対名前を知ってる人気小説。書籍版もとうとうでましたね!
平日は普通に日本で営業している洋食屋・ねこやが、土曜日だけ異世界と空間が繋がって、異世界の人や不思議な生き物たちがご飯を食べに来る話。短編連作でなんとなく状況の変化が訪れつつも、ねこやで美味しいもの食べて「はにゃーん」する様は変わらないのが最高に好き。洋食屋と言いつつ和食もスイーツもカバーで弱点なし。鉄板飯テロ。
バトったりも策略練ったりもせずに、毎回変わる語り手が自分の好きなものを食べて語るという繰り返しなのに、飽きがこないがまず驚き。
スウィートドリームファクトリー
同じく短編連作、たまに中編な感じで展開する、古都の外れの森の奥、異世界喫茶店ではニコニコ顔のマスターと、美味しいスイーツが待っています。
飯モノもいいけれど、スイーツものもいい...というか、スイーツ描写って好きです。食べると太るけど読んでも太らないじゃないですか!これぞ、読書ダイエット。異世界人たちが美味しそうにスイーツを頬張りながら、その美味しさを語り合うのも微笑ましくて幸せで、あとこっちは異世界食堂よりちょっと、横のつながりが強めの展開。仲良くなってきますし。
(追記)こちらも「ネット小説大賞」受賞作品として、書籍化されました。イラストが可愛くて、ネット版読んでいても書籍版の満足度高い!
可変迷宮
異世界に落っこちたと思ったら、魔物を料理のレシピに変えられる力を得ていた貧乏大学生のグルメ冒険譚。異世界召喚時に女の子に拾われてヒモるとか、チーレム感とか、微に入ったせくしーとか、すごくなろうっぽい。
異世界召喚や転生で、現代料理作ってひゃっはー展開は定番ですが、迂闊にそういうことしないところが自分的にポイント高かった。本文引用するなれば、
「あ、食い意地ですよ兄さん。流石に現代知識を生かして料理はしましたよね」
「蒸し料理が無かったから、作ってみたな」
「そうそう、あるじゃないですか。それで他には何を作ったんですか」
「この世界の味に干渉したくないから、それ以降やってない。変に日本の文化を持ち込んで独自の美味しさが生まれる邪魔をしたくない」
そういう食いしん坊の矜持がいいよね、あったかもしれない可能性を消すという意味で、現代知識を持ち込むのは、未来を知って過去改変するのと一緒なのですよ!
長編で、物語としても一部終わりから二部にかけての展開が好み。主人公の絶望からの立ち上がり好きー。
おひとりさまでした。 ~アラサー男は、悪魔娘と飯を食う~
一度箸休めで現代物。ただしタイトルの通りに悪魔娘が出てくる若干ファンタジー。独身、恋人なし、食べ歩きと読書が趣味の男が、不意に現れる悪魔娘と食卓を囲む話です。
個人的に孤独のグルメっぽさを感じている作品で、悪魔娘という如何にもな萌えアイコンが出てくるのにイマイチ活用されておらず(しかしそれが逆説的に萌を感じさせて云々...)、淡々とご飯食べてます。短くテンポのいい食べ物表現が美味しそうで、夜中に読むと夜食テロ。あったかい料理はちゃんと湯気を感じる作品。じゅるり。
短編連作で普段はあまり意識されないファンタジー要素を、要所要所でしっとりシリアスに決めてくるのも好み。チラリズムファンタジー。
(追記)ってこれもこれもいつのまにか書籍化していたまあ面白いからわかるけれど!
おひとりさまでした。 ~アラサー男は、悪魔娘と飯を食う~ (ぽにきゃんBOOKSライトノベルシリーズ)
- 作者: 天那光汰,烏羽雨
- 出版社/メーカー: ポニーキャニオン
- 発売日: 2016/02/03
- メディア: 文庫
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異世界料理道
異世界召喚されたと思ったらキャワーでワイルドな美少女に拾われてヒモる展開。でもチートしてません。見習い料理人が現代から持ち込んだ知識と包丁だけで渡り合う話です...主に猪肉と。
やたら動物の解体が微に入り細に入りだったり、都合よく凍らせる魔法とか出てこないあたりや、主人公が「見習い」ということで、画期的な解決策というより試行錯誤して方策を見出してく感じが地に足についたファンタジー、かなぁ。当面の舞台が森で、出てくるのが狩りを生業とする「森辺の民」で、異世界ファンタジーにありがちな中世ヨーロッパじゃないのも新鮮。これも書籍化おめでとうございます!
メニューをどうぞ
なろうでは異世界で異世界素材を使ってシェフ&パティシエをやる展開も定番です。
家族を失って一人ぼっちになった料理人の女性が異世界へ働きに出る話。契約期間が過ぎれば日本に戻れるし、主人公も納得ずくで異世界に来てるので、異世界食材の料理に集中できるのが読者的に、ほっ*1。
「傭兵団の料理番」「異世界コンシェルジュ~ねこのしっぽ亭 営業日誌~」「金色のシェフ 異世界での食の魔術師」「かわいいコックさん」「おかしな転生」あたりが同系統で有名だと思うんですが、ここはあえて「メニューをどうぞ」で!
勤め先のホテルの側に迷宮があってその迷宮模様を雇い主の王子様とかお手伝いの兄妹が描写してくれるのもなんか楽しい。
ただいま、おかえり、いただきます。
またまた箸休めで現代料理もの。ありふれた悲しみを抱える普通の現代女性が、仕事から帰ってきてご飯作って食べる話。卵入りかきあげうどんとかラーメンとか、素朴でありふれてだからこそホッとします。
いつも豪奢なご飯だと胃が休まらないわけで、馴染んで心休まる家庭(一人暮らし)の味に、たまになぜか涙腺刺激されてボロっときます。こちらも短編連作、それこそ仕事帰りの電車の中で一駅で読んで、帰りのスーパー行く気力にしたい、そんな一作。同作者で「極彩色の食卓」も好きだな。閑話休題終わり。
(追記)「上島さんの思い出晩ごはん」として書籍化されました。めちゃ小躍りした。
騎士団付属のカフェテリアは、夜間営業をしておりません。
そういえば仕事帰りの夜食ご飯、残業ご飯の異世界モノがあった気がすると記憶を漁って出てきた作品。騎士団付属のカフェテリアでくいっぱぐれた騎士団長と、彼女を迎える料理長の話、以外の何物でもない。
女の騎士団長と男の料理長、料理長の方がほのかな恋心を抱いていて、なわけですが、短編連作で遅々として進まないと思ったら、綺麗に10話くらいでまとまっていて、しかもホワンと幸せな気分になれたのですさんだ時に読むといいと思うよ。じれったさにイライラしないぐらいかつ、リア充爆発しろと思わないくらいの程よい糖分補給になります。
(追記)書籍化されましたね。嬉しい!
騎士団付属のカフェテリアは、夜間営業をしておりません。(1) (Mノベルス)
- 作者: 遠原嘉乃,雨壱絵穹
- 出版社/メーカー: 双葉社
- 発売日: 2015/11/13
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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ラスダン手前のよろず宿
RPG的「ラスダン手前の回復ポイント」なぼったくり宿を実際に営む、元地球人の少女の物語。
グリンドワールドと一緒で、料理はサブです。でも淡々として適当な主人公の一人称がすごく好きでして。特にその料理感。キマイラストロガノフとか「冷やし中華はじめました」ていいながらクロワッサン出すとかのセンスがツボなのですよ!その一端をご紹介。
首を傾げながら、茹でたマンドラゴラキャロットを包丁で細かく微塵切り。
いっぺん熱湯で茹でてトドメを刺さないと、白刃取りとかしてくるんだからコレ。往生際が悪いったらない、最期くらい潔くしなさい。
ちなみに熱湯に放り込んだ際に上げてくる断末魔を聞いたら体調不良起こすから、耳栓必須。
この前油断して、インフルエンザっぽいのにかかった。
よくないですか!良いですよね。あと普通に魔王勇者ものとしても面白い。
異世界居酒屋「のぶ」
定番ではじめたから定番で終わらないといけない気がしたので、こちらもちょう有名どころ、異世界居酒屋「のぶ」。なろうコン大賞受賞で書籍化済。
とある異世界の古都の裏路地と、現代日本の居酒屋の表口が繋がって、異世界の住人たちが訪れて舌鼓を打つ話。大将と気立ての良い従業員なしのぶちゃんの組み合わせが素敵!
異世界といっても魔法は出てきません。異世界食堂は土曜日のみ、各地に現れる扉経由で異世界人が来訪しますが、こちらは常時固定の場所に繋がっている分、地域密着型というか、現地の人たちとの人情とかふれあいとか、もっと異世界側に根ざした感じ。その分古都の利権と繋がったり疑われたり、短編連作でも話の緩急や人間模様がはっきりしてるかな、と。いずれも面白いのは変わりないですが。
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*1:やっぱり召「喚」というくらいで、喚ぶ人の説明ぐらいあってほしいし、元の世界では警察が家族や周辺を事情聴取して...と考えると落ち着かないんです