雑誌で「女性が憧れる女性」みたいな企画やってると思い出すんですが、自分、「感性の柔らかな女性」に憧れるんですよね。
自分が勝手に「感性の柔らかな女性」と目す人には何人か巡り合っていて、これからもぜひお知り合いになりたい。
ただこの「感性の柔らかな女性」のニュアンスってなんとなく伝わりづらいというか、人によって範囲が違いそうなきがするのもまた確か。人が良いとか優しいとか、そこらへんのジャンルとごっちゃ、重複してる気もしますし。
というわけで、三森が好きな「感性の柔らかな女性」、それの二次元版て小説に例えると誰?というのがこの記事の趣旨です。
クジラの彼(作者:有川浩)より、聡子さん。
- 作者: 有川浩
- 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
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「潜水艦乗りからすると世間の人って二種類に分かれるんだよね。潜水艦が『潜る』っていう人と『沈む』って言う人。素人さんは半々くらいの確実で『沈む』って言いがちなんだけど、君は違うんだなって」
「え、だって」付け足された説明でさらに訳が分からない。
「クジラが沈むとか言わないじゃない」
自分史上最高に「自分が男だったらお嫁さんにしたいと思うヒロイン」。それはクジラの彼の聡子さんです。引用のやり取りがきっかけで、ひねくれ者のヒーロー冬原が聡子さんに一目惚れしちゃうしね!冬原の気持ちわかるわーむしろ羨ましいわー。
そんな冬原が聡子さんにお付き合いを申し込むシーンがすごく好きです。さらっと付き合おうかと言った冬原さんに対する、聡子さんの返しがあまりに可愛い。自分も男だったらこんな風に思われたかった...!
冬原が聡子さんを好きになる「そういうセンス」が、自分にとってはまさしく「感性の柔らかさ」で、思いがけない方向からぽふっと抱きつかれたみたいな優しい衝撃です。
時計を忘れて森へいこう(作者: 光原百合)より、翠さん。
「ネッシーはいてほしいし雪男もいてほしい。天使や妖精やカッパや天狗はきっといると思うし、幽霊は、そうね、あんまりいてほしくないけど、でも幽霊も出られないような世界には住みたくない。幽霊が出るだけの暗がりも無い世界なんて、すごく住み心地が悪いと思うから。......私のいってること、わかる?」
「ええ、よくわかります。わかってると思いますよ」
聡子さんがお嫁さんにしたい感性の柔らかさなら、翠さんは自分が一番最初に「感性の柔らかい女性って素敵だなぁ」と思った人。原点ですね。
今では定番の日常ミステリー系のこの本で、探偵の助手的立場の翠さんは、誰かの物語が完結するのに「ちょっとだけ足りない救い」を継ぎ足す、そんな聡さみたいなのがあるんですよ。翠さんだけでは誰かを救済するには足りないのだけれど、でもその言葉で、ふっと呼吸が楽になって目の前が開ける的な。
「ありがとう。......代わりなんかじゃありませんよ。」
翠さんと対になる、優しくおとぼけで鋭い探偵役はそれをよくわかってて、で、翠さんが当たり前のように差し出した手に救われるんですが、それが自分史上ベスト3ぐらいにはいる名シーンです。似たシチュエーションの駅を見つけると、いつかそんなこともあったんじゃないかしら、と空想に耽る。
女王陛下の薔薇(作者:三浦真奈美)より、エスティ。
女王陛下の薔薇〈1〉夢みる蕾たち (C・NOVELSファンタジア)
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「生意気なことを申し上げるようですけどーー右へ行くか左へ行くか決めなければならないときには、すでに選択肢はないのだと私は思います。そこまで来た時点で、私たちはすでにあらゆる判断を重ねてきたのだと、そうはお思いになりませんか? 」
おっとり控えめな「家庭の天使」のまま、女性的なしなやかさでもって苦難を乗り越え選択を重ね、古き慣習の男たちと渡り合ってくエスティ。
もー、この話に出てくる「男ども」の頭の固さとか融通の利かなさ(この二つは似て非なるもの!)には何度壁殴りしそうになったことか。
それに立ち向かうでもなくしなやかにかわして、「解釈を変えていく」エスティに心が解けた気持ちになるのです。変わらなくてもいい、でも、見方を変えることはできるよね?という。
結構重たい状況下(破談とか親との死別とか世論の総バッシングとか)、流され続けたようにも見えるエスティが、でも物語が終わるとちゃんと判断が重ねての落着になっていて、貫かれた柔らかさとかしなやかさとかにハッとさせられる、そんな女性です。
wonder wonderful(作者: 河上朔)より、こかげさん。
wonder wonderful 上・1 (レガロシリーズ)
- 作者: 河上朔
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(......でも、それも大概面倒だよなー。罵るのって体力使うし。言った自分にダメージ受けるしなあ)
考える端から別のことを考えている自分にふと気付く。
......駄目だ。そもそものやる気がない。怒りのエネルキーを消費する気がさらさら無いよ、もっとがつんと!ほら、火がついたときみたいに火がついたように怒らないと!あいつらのしたことって大概ひどいじゃん。ね、考えてみなよ。
主人公の女性が、大概にひどい裏切りにあった直後のシーンなんですが、
(怒りも持続できないなんて、情けない)
で、サクッと怒りを納めて切り替えるシーンに「うわ、いいな!!」と感動して震えた覚えがある。
「世の中には完全な悪人は滅多にいないと知っちゃってるから、ずっと嫌って怒ってることなんてできないよ」という、若さとの違いを知ってる感じがですねー、もう、感性の柔らかさに一種の達観が加わっててたまらない。熟した感性の柔らかさ。
経験から来る一歩引いた客観が出来る人で、でも「他人ごと」じゃなくて「自分ごと」として物事を捉えられる、そんなこかげさんの感性の柔らかさが、こんがらがった物語を解きほぐす鍵になっていて「彼女が主人公でいる意味のある物語」だったなーとか。
そして老成しているようで、怒りのままに走り出しちゃったり、「やったー!」てハイタッチしたりするこかげさんの可愛さにギャップ萌えです。悶える。
★★★
飲み会の場では定期発生する「女から見て結婚したいと思う女」みたいな言葉遊び的質問にもすべからく「感性の柔らかな女性です!」と答えてます。自分がなりたい「理想の女性像」的なものも、今も昔も「感性の柔らかな女性です!」だなぁ。それぐらい好きです。
というかきっと、みんなこういう女性好きだよね?(独断と偏見)