部下が一人の時って、先輩後輩の延長線上じゃないですか。「年上の部下」なんてイレギュラーな存在が割り当てられることも少ないし。
それが部下三人以上になったあたりから、 「今までのやり方」は通用しなくなって、自分は周囲の先達や会社外の友人、大学時代の仲間なんかに助言を求めた。それでも自分の中に落とし込めなくて、最後はビジネス書を読み漁ったり。
そんな中、ビジネス書を読み漁って気がついたことは、ビジネス書って大きく三種分けられるということです、自分の場合。
- 今いるステージを快適にするビジネス書(事務効率化、時短術)
- 内面世界を問うビジネス書(心理学、メンタル強化)
- 次のステージに備えるためのビジネス書(マネジメント、独立、意思決定)
どの段階でどれを読んでも間違いはないし気づきはきっとあるんだろうけれど、なぜビジネス書を読み始めたか?といえば、自分は「次のステージに備えるため」が出来ていないまま一段ステージが上がって、迷いが表面化していたから。
そこら辺気がついたあたりからビジネス書を買い漁るのをやめて、「今の自分の身の丈に合う」と思った本を再読しつつ、自分に取り込もうと実践に傾くようになりました。
次、ステージを上るにはもう少し時間が必要だけれども、一段上の高みが見えてきたらまた再読すると決めた10冊です。
ビジネススキル・イノベーション (「時間×思考×直感」67のパワフルな技術) 作者: 横田尚哉
時間を置いて読み返したいビジネス書というのも珍しい。

ビジネススキル・イノベーション (「時間×思考×直感」67のパワフルな技術)
- 作者: 横田尚哉
- 出版社/メーカー: プレジデント社
- 発売日: 2013/03/14
- メディア: Kindle版
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言わずと知れたビジネススキルの名著。「ビジネス書大賞2013年」入賞ですしね。当時、紙で購入して衝撃を受けつつ「今後ビジネススキルの執筆者はやりづらくなるなー」と思うくらいには、色褪せにくい体系的かつ本質的なスキルの本。
電子書籍で再読ですが、当時とは違った箇所が目を惹かれて面白い。昔は「仕事には想定の1.4倍の時間がかかる」「知的熟成の時間を持て」「ルールはマニュアルに、モラルはガイドラインに」辺りに感動したのですが、今は「根回しはインパクトを和らげるために行う」や「感性でジャッジし、論理的に検証する」に薫陶を受けます。特に後半の「感性でジャッジする」については、前後の文脈含め「当時の自分はなぜここを面白いと思わなかったんだろう?」と不思議になるくらいです。言い換えればデータを信頼するな、データで信頼させろ、になるのかな。
一旦読んだ方も、知的熟成した今一度、再読はいかがですか。
できる社員は「やり過ごす」(作者: 高橋伸夫)
ビジネス書に泣いた。
2003年に出た本なんです。その時々の社会情勢やブームで流行っては廃れる賞味期限の短いビジネス書界隈で、色褪せない本。何度も読み返す本。そして最後は号泣する本。
上司の指示を「やり過ごし」、部下の不始末は「尻ぬぐい」、さらに「泥をかぶって」働く。それでも辞めない企業の「係長」たちには何があるのか?・・・そう、見通しがあるのです。この企業には見通しがあることを肌感覚で知っている、そういう企業の係長は辞めない。ではその見通しとは何なのか?から展開する想定外に壮大なビジネス理論に、なぜか最後、救われた気持ちになって泣きます。
ちなみに、著者が「未来傾斜原理」の前提説明として取り上げるアクセルロッドの「反復囚人のジレンマ」の研究成果はそれだけで読む価値あり。読了以降、私の行動原理の1つになってます。同じ相手と「囚人のジレンマ」を反復して繰り返す時、最適行動は何か?その結果は結構衝撃というか、心打つ感動というか。ぜひ本文で確かめてみてください。
本文中エピソードで、六五年図書館で眠っていた本を手に取った著者の感慨を、私は今、この本に感じます。
30代は仕事に狂いなさい!(作者: 中島孝志)
今の私にだけ、聞こえる周波数がある。
老化に伴って高い周波数の音は聞こえなくなるんだそうな。若者にしか聞こえないモスキート音がその代表例ですね。そんな感じで、その時その私だけが必要とする助言や後押しってあるわけです。若手抜けした中堅、そこそこ手慣れて仕事ができて、なのに焦っている30前後の自分にはドンピシャな本でした。
見えない世界が見える人。自分で問題を発見、解決の処方を考え、行動して解決に当たる"プロアクティブ"が今求められている人"財"。言われると当たり前ですが、ヘリコプター・ビュー(俯瞰)を心がけてブルーオーシャンを探す、は普段の日常に埋没して忘れることが多い。知らぬ間にレッドオーシャンで溺れてる訳です。気をつけねば。
文中の「失敗しても、その失敗のしかたを周りはじっくり見ているんだ」も、自戒として手帳の見えるところに張っときたいくらい必要な言葉だなー。この著者のシリーズの中で、一番言葉が好きな本かもしれません。
働く女性 28歳からの仕事のルール(作者: 田島弓子)
ソツなく仕事を「こなせちゃう」女性へのエール。
どれも目新しくはないけれど、憧れのキャリアウーマンな先輩に夜、相談に乗ってもらったような安心感はなんででしょう。
「目の前の仕事と将来のモヤモヤは切り分けて」「多少ドリフト(流される)されてもいいくらいの柔軟な心構えで、与えられた環境の中で全力を尽くしていく」「逃げ出したいという自分と、とことん向き合う」
読んだ後はふっと呼吸が軽くなるよう。この本を読んでから、メンターというと、勝手にこの人を思い浮かべる。ルールよりもっとソフトな、ものの捉え方の本、かなぁ。
あと単純に、仕事をする上での細やかな気配り(というかもはや根回し)やホウレンソウは、男女関係なく一読の価値ありだと。「自分のためのホウレンソウ」と「相手のためのホウレンソウ」なんて、私は読むまで考えもしなかった。
「空気」で人を動かす(作者: 横山信弘)
坂を転がるボールのように、モラルハザードは止められない。
心地良い「空気感」を上手く商品化してる例と言えば、夢と魔法の王国・ディズニー。でも、アトラクションが楽しいだけで人は集まらないですよね。統制が取れつつ、それぞれの責任(自由)の範囲で必要なことをやるからこそ、あれだけの王国が築かれるのです。
そんな空気感を「締まった空気」 と呼び、その維持の難しさや、駄目になってしまった空気=「解けた空気」をどう立て直すか?が書かれたのがこの本。
読んで一番考えさせられるのが「解けた空気を締まった空気に立て直すには少なくとも8ヶ月は必要」という部分。正直「そんなにかかるのか!」と。しかも立て直しノウハウも、面倒な上に神経すり減らしそうな内容。
と言う訳で、結局のところ、空気が解け始めるサインに早く気付いて対処するのが重要という気づきが本書一番のハイライト。この初期症状のチェックと対処法も書かれてるので、モラルハザード気味な職場、学級崩壊な先生は一読の価値ありだと思います。
採用基準(作者: 伊賀泰代)
本当に採用されたいなら、ボールは入社より先の「やりたい仕事」に向かって投げればいい。
我がバイブル「働きマン」で、“面接で、ボールを「入社」に向かって投げるより「入ってから何をするのか」に設定する方が到達点は高い”みたいなこと書いてあったので、きっと多分これで正解。まごうことなきリーダーシップについての本です。
カリスマリーダーはいつの時代も一定数現れる。でもそれだけでは足りなくて、もっと多くの、要所要所至る所でリーダーシップが必要だと。日本に足りないのは“リーダーシップキャパシティ”、リーダーシップの総量だと。リーダーに必要なのは素質ではなく訓練だと。
著者の言うリーダーシップが何なのか、どうすることをベストorベターと定義しているかは読んでみてのお楽しみ。とりあえず私は、リーダーシップを「船頭多くして〜」の枷にはめて発揮してこなかったことを後悔するぐらいには影響を受ける本です。うん。
朝イチでメールは読むな!(作者: 酒巻久)
サラリーマン社長の経験則から見えた「誰が会社で出世するのか」
キャノン電子の社長、酒巻久氏が経験から紐解く仕事習慣の本。
上司部下との関係、スキルアップや交渉、組織のマネジメントなど、広範に渡るのにいちいち示唆に富んでいて、マーカーを引いていったら最初50箇所になってました。サラリーマン経営者が自分の試行錯誤を書いた経験則の本って、座学とはまた違って面白いです。あと、出世する人はこういうとこに気を使うんだな、と。
ぞわっと背筋に来たのが、2章の上司についてで「上司の頭越し(直属の上司飛ばし)は辞職覚悟でやれ」。それは最も上司の怒りを買い、たとい結果を出しても上司との関係が壊れるのは必至だから。チームについての8章でも、情報の飛ばしと抱え込みが組織を狂わせる、として、最近、それで再編に至ったチームを知る身としては、自戒にしたいと。
再読で、過去の自分の読書メモで「昇進して部下を持ったら再読する本」の伝言があったんですが、今も消化しきれないところがあるので「会社の意思決定に関わる立場になったら再読する本」として引き継ぎます。
入社10年目の羅針盤 つまらない仕事が楽しくなる(作者: 岩瀬大輔)
あと5年、遅く読みたかった本。
「入社1年目の教科書」で、新人に「当たり前のことを当たり前にやりきる」大切さを説いた著者が、10年目社員に示す羅針盤。10年目社員に対してはさすがに、教科書なんて上から目線しづらいから羅針盤なんだろうか。
上司をマネジメントして、職場のボトルネックを見極めて、メンタルとともに身体を鍛える。そして、Knowing "Just Enough"、足るを知る。これはもちろん、自分の地位に満足する、という傲慢さではなくて、
・何が幸せか自分の中に「決め」を持ち、どうすればそれを満たせるか意識する。外部の評価に左右されない、でもあります。
・当たり前の満足に「慣れない」。角度を変えて、たまにはリスクをとって、仕事と人生を楽しむ、ということ。
何かしら気づきはあるけど、この人がこのタイトルでこの本を出すのは、あと5年遅くて良かったんじゃないかなーと惜しむ気持ちがあります。丁寧に作られた料理を出されて「なんかひと味物足りない」みたいな贅沢な感想ですが。
★★★
ラスト二冊は、何度も再読したけれど、これからも再読する予感が残っていて、ブックオフに売ろうとは欠片も思わない本。瀧本哲史先生の「武器」シリーズですね。
武器としての決断思考(作者: 瀧本哲史)
「明日から頑張る」と何か先送りした日に読む決断思考の本。
ディベートという「根拠から結論にいたる思考の筋道をつける」道具から、決断するとは、を導く本。ディベートは正解ではなく「今の最善解」を導く道具であり、それには準備が8割、根拠が命であるとして、それぞれ因数分解した内容です。
ディベートはメリットとデメリットの比較で成り立ちます。そのため、メリデメの弱いところの見つけ方、根拠の崩し方、逆に反論にさらして根拠を固める手法が豊富で、なるほど!と膝打つところが多い。ビジネスの交渉やプレゼンで必要とされるスキルに相当近い、というか同じだと思います。正直仕事で使えます。
本書では「先送り」という決断しない決断について「実は情報をコントロールする人はそれが狙いだったりします」と評してます。日常の先送り/見送り案件に対して「これは誰のメリットになるか?」考える癖がついたおかげで、たまにそこを突いて議論をひっくり返せるようになったのが、個人的本書一番のハイライトだったり。
武器としての交渉思考(作者: 瀧本哲史)
自分が損をすることばかりな交渉下手さんへの特効薬。
バトナをご存知でしょうか?
「目の前の相手と交渉する以外の選択肢」=バトナを武器に交渉に臨む事は、「別にこの交渉がまとまらなくても困らない」という有利な立場で、相手と交渉できるということです。つまり、何が自分のバトナか?相手のバトナは何か?を情報収集し、どれだけバトナが持てるかが交渉の肝ということ。これを使いこなせたら、ちょっと自分のビジネスが変わると思いませんか。
私は初めて本書を読んだとき、自分はバトナを単語の意味として知っていても、テクニックとして使えるほど、理解も納得もできてないのに気がつきました。他のTIPSも、交渉は最初のアンカリングでほぼ決まる、や、譲歩は必ずもったいつけろ、とか、いかに自分が無防備に、何の装備もなく交渉のテーブルについていたか思い知らされました。
初めての海外出張で上司から餞別に渡されて、「もっと早く寄越そうよ!」と毒づいてしまった交渉術の本。私も後輩に譲り渡し、最近買い直しました。ひいき目なしに、この一冊でビジネスが変わる本です。