青猫文具箱

本と文房具を愛でる日々。

恋愛?ミステリ?青春?の、おすすめ和洋菓子・チョコレート小説。

最近「スイーツ小説ダイエット」なるものを編み出しまして。

ルールは簡単ただ1つ、「甘いものが食べたくなったらスイーツ小説を読んで心の空腹を満たす」。たまに不発で甘い物欲が助長されるので成功率はちょっと低めですが、上手くいくと読書に没頭して夕食まで空腹が紛らわすことが可能です。

そんなわけで、ご注文は恋愛モノですか?ミステリ仕立てですか?はてさて甘酸っぱ青春モノですか?な、おすすめスイーツ小説8点盛。全体的に当たり軽めで胃に重たくないチョイスです。

 

1.ショコラティエの勲章

和菓子の繊細さに、ショコラのほろ苦さが同居して。

ショコラティエの勲章 (ハルキ文庫)

ショコラティエの勲章 (ハルキ文庫)

 

老舗の和菓子屋で売り子として働く女性と、お隣人気ショコラトリーの男性シェフが巡り合う日常系ミステリ。

特筆すべきは読了後の後味。各話、しっかりショコラです。甘くてお洒落ででも隠しきれないほろ苦さ。渡る世間に鬼はいないけれど、シンデレラのようなめでたしめでたしな綺麗な結末はないんだよ、感がずっしり大人テイスト。

「七番目のフェーヴェ」とか、見ようによっては嵐の前の静けさで、ところにより不穏の物語が始まりそうでたまりません。

 

2.まるまるの毱

口溶けはほのかにしょっぱく、まあるい甘さで。

まるまるの毬

まるまるの毬

 

江戸は麹町の菓子舗「南星屋」、かつて巡った日本全国の銘菓を似せてつくる主の治兵衛、娘のお永、孫のお君の親子三代。治兵衛視点で語られる、和菓子と人情の時代小説。

親子三代それぞれに悩みと秘密を抱えつつも、その渋みを甘い餡と餅がふんわり包んでくれる優しい読後感。最後、ちょっと甘塩っぱ切ないけどでも良い話だった!と感じる家族の絆にほっこり。お腹が温まります。あとお君ちゃんすごくいい子、本当にいい子(もらい泣きしながら)。

 

3.リリーベリー―イチゴショートのない洋菓子店

甘いクリームの合間、不意に酸っぱいラズベリーが。 

リリーベリー イチゴショートのない洋菓子店<リリーベリー> (メディアワークス文庫)

リリーベリー イチゴショートのない洋菓子店<リリーベリー> (メディアワークス文庫)

 

借金返済のためバイトすることになった女子大生・明海と、影のあるパティシエ・竹下が、洋菓子店「リリーベリー」で過ごす色彩鮮やかな一年間。一年間限定開店、店に置かれるケーキは一日一種類のみ、そして、スイーツの主役であるイチゴショートがない。

成長モノ…いやラブコメ?かな。明海さんの笑いを呼ぶ行動と地の文が小気味よくて、そのくせここぞというタイミングで心臓鷲掴んでくる愛おしいエピソードが狡い。後半はムズムズ焦れ焦れします、恋愛的な意味で。

 

4.夏期限定トロピカルパフェ事件

シャーロックVSルパン、ここで勝つのはどっち?

夏期限定トロピカルパフェ事件 小市民シリーズ (創元推理文庫)

夏期限定トロピカルパフェ事件 小市民シリーズ (創元推理文庫)

 

小市民を目指すふたりの、打算と騙し合いの日常系?短編連作ミステリ。

暑さにやられた小鳩君が、小佐内さんに一方的に挑戦状を叩き付ける「シャルロットだけはぼくのもの」が最高に良い。信用はしても信頼はしない、狐と狼の騙し合い。日常の延長としてのスイーツ巡りから始まって、一連の事件が落着した後、小山内さんが打った互恵関係への終止符が、不思議に夏の空気感を纏っていて、ほろ苦いような、もの寂しいような。

小鳩君が「それでぼくはパフェだけは食べられない」ようになるまでの一時です。

 

5.かまどの嫁

真心のお菓子が舌と心を蕩かせる。 

かまどの嫁 1<かまどの嫁>

かまどの嫁 1<かまどの嫁>

 

陰陽師に嫁いだ少女が、寝所を追い出され「かまど」で稲荷神に捧げる菓子を作るうち、人と神、妖と心通わせていく和風ファンタジー。

言葉回しに癖があるけれど、優しい文体で世界観に合ってます。あとやっぱりお菓子美味しそう。「しゃばげ」や「みをつくし料理帖」にはまったことのある人なら好きじゃないかなー。挿絵の可愛さは群を抜きます。

「小説家になろう」発で、お菓子に魅せられて素敵な男性陣が〜という逆ハーレム要素(複数男性陣にちやほや)があるので苦手な人はご注意。

 

★★★

甘いものばかりでそろそろ食傷気味になってきたところでしょうか?そんなあなたに珈琲を一杯。

珈琲店タレーランの事件簿 また会えたなら、あなたの淹れた珈琲を (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)

珈琲店タレーランの事件簿 また会えたなら、あなたの淹れた珈琲を (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)

 

京都の一角にある珈琲店で、珈琲好きの青年が出逢ったのは、謎解きが得意なバリスタでした。

カフェが舞台の日常謎解きモノで、硬めの語り口なのに文章は軽やか。珈琲知識も高まるし、全編珈琲の匂いが漂っていて口直しにぴったり。

★★★ 

 

6.ショコラの王子様

チョコミントミルクのような爽やかな甘さ。

ショコラの王子様<ショコラの王子様> (メディアワークス文庫)

ショコラの王子様<ショコラの王子様> (メディアワークス文庫)

 

元気な「チョコ利き」女子高生と、ぶっきらぼうなショコラティエが紡ぐチョコレート専門店の物語。

動物を引き寄せる体質のショコラティエってところが珍しい気がするけれど、全体的には王道ほんわか幸せな雰囲気で、意外と恋愛的な糖分は控えめ。むしろ家族愛か兄弟愛?それでもラスト、ヒロインがヒーロー目指して走るのは、オチがわかっててもいい。

職人とは違うお客さん(女子高生)目線で描写される一粒チョコがとにかく美味しそうで、無性に食べたくなる。

 

7.アイスクリン強し

文明開化×西洋菓子×青春のコラボ。

アイスクリン強し (講談社文庫)

アイスクリン強し (講談社文庫)

 

明治の築地居留地近く、西洋菓子「風琴屋」を開いた皆川真次郎が、愉快な仲間・元幕臣「若様組」の警官達と、日々起こる騒動に巻き込まれていく話。

「スイーツ文明開化は酸いも甘いも運んでくる」のコピーに心躍らせながら楽しく読めます。文体はそれとなく古めかしい感じですが、さらさら読みやすくお菓子も当然美味しそう。

登場人物は「しゃばげ」を思い出すどたばた感で、それぞれが抱えるエピソードは江戸の名残を色濃く残していて、にぎやかで温かくたまにほろ苦い。伏線回収は忘れたころにやってきます。

 

8.和菓子のアン

大福は大きな福で出来ている。

和菓子のアン (光文社文庫)

和菓子のアン (光文社文庫)

 

デパ地下の和菓子店「みつ屋」で働く女の子が、個性的な同僚たちとともに、お店に訪れる謎を解き明かしていくお仕事ミステリ。

謎を持ってくるのはお店のお客さん、探偵役は店長で、それを和菓子になぞらえて解決していく展開。遊び心に満ちた和菓子の由来とか、今に続く綿々とした歴史とか、新鮮な知識なのに「お勉強」臭くない程よい塩梅が見事。

主人公のアンちゃんによる地の文が素敵で、感性の柔らかさではっとしたりほっとしたりきゅんてしたり。ヒーロー役もひねりがあってかわいいー。

 

 

お菓子をテーマにしつつ全体的に口当たり軽めのチョイスで行きましたー。いかがでしたでしょうか。「タルト・タタンの夢」「お待ちしてます 下町和菓子 栗丸堂」あたりもどこかに入れようと思いつつ、8つを超えてしまったので自重です。

日常系ミステリが多いのは三森の趣味...というより、食べ物屋が舞台の日常ミステリ(と行かないレベルの謎解き)ものって最近よく見かける気が。軽食のように摘める手軽さが受けるんですかねー。

空腹を読書で満たしてみるのも良いし、あとランチのあとのデザート的にちょっとずつ読み進めるのも楽しいです。紹介したのは大体短編連作構成の小説なのでぴったり。

 

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