青猫文具箱

本と文房具を愛でる日々。

映画「縫い裁つ人」感想文。

「何か欲しい物ある?」「今日何食べたい?」

そう聞かれる場面は、誕生日であったり、出先のランチであったり。

「何」がいいと聞かれると正直困るんですよね。「どれ」がいいか選択肢で聞いてくれれば答えようもあるのに。だいたい一番望むものを自分でちゃんとわかっているなら、私はあなたにその質問をさせたりしないと思う。

【一生着続けたい服】映画「繕い裁つ人」を観て | よつばブログ。

でも一生に一着でいいから、ずっと着続けたいと思える洋服が欲しいなあと「繕い裁つ人」を観て強く感じたんです。考えてみると私、死ぬときにこれを死装束として着せてもらいたい一着ってない。そのぐらい愛着のある洋服って持っていない。

この感想を読んで、そうだ映画に行きたいなと思い立ち、行ってきました「繕い裁つ人」。東京の映画館はもうだいたい終わっていたので、ちょっと遠征して隣の県まで。

繕い裁つ人 DVD

繕い裁つ人 DVD

 

繕い裁つ人。頑固者で職人肌な、仕立て屋二代目主人の物語。

原作では職人肌な主人・イチエさんの苦悩に寄り添って読んでいたのに、映画では藤井さんに同調して泣いてました。藤井さんは、イチエさんが作る服に魅入られて、イチエさんの服を百貨店で扱いたいとやってくる百貨店の社員さんです。

高みに上れる腕を持ちながら「でも変われないよ、時代だね」と諦めてしまう職人たちに、「なんで、どうして」ともどかしさをもって寄り添おうとする藤井さんの焦燥がわかる気がしたのです。とても素敵な服なのに、形見として語り継がないで、燃やして墓場に持ってこうとするんだね、と。

そしてそんな藤井さんに、たくさんの服飾誌を抱えてその中からしか答えを選べない藤井さんに、イチエさんはいうのです。

そんなにあったら、本当に好きなものが分からなくなるんじゃないかしら

その図書館のシーンは、もうロケーションもカメラワークも、そして役者さんも素晴らしくて、だから多分この映画を見た人の多くは、このシーンだけでこみ上げるものがあると勝手に思っているんです。そしてここのイチエさん、残酷だなーと。

本当に好きなものがわからないから、だからせめてたくさんの選択肢を集めて、そこから選ぼうとするのに。大切なものが「何」かわかってる人は、「どれ」かから選んだりする必要はないわけで。

でも、そうでした。映画冒頭でイチエさんの服は「買い手に迷う隙を与えないものだ」と表現されたものなのです。選択肢を「どれ」と迷う必要がない。

 

一生着続けたい一着が欲しくなって、でもそれがどんな服なのか、今の自分には思いつきませんでした。そしてその服が何色なのかもわからない。イチエさんのように、美しい青を自分で決めて纏う覚悟が思い当たらない。

映画の中で同じようにイチエさんの言葉に動かされた藤井さんは、この図書館の会話をきっかけに、一つの変化を自分で決めて、そしてそれが迷いのあったイチエさんの背中を押す、そういう展開になるのですけれど。

そして時を経て。藤井さんが階段を上って扉を開けたその先、そこでイチエさんが示すひとつの答えを見るんですね。とてもキラキラとした。その瞬間、藤井さんの心にこみ上げたのはなんだったのかなぁと。

まぁ詳細気になった方はこれから出るであろうDVDを見ていただくとして。

 

私もオーダーメイドな、つまり誰かが用意したのではない選択肢、大切な「何」か、そういうのがほしいなぁと願う、やっぱり素敵な映画なのでした。それが「何」なのかまでは、まだちょっと道の途中でわからないのですけども。

 

原作漫画は色々展開違いますがやっぱり面白いですよー。 

繕い裁つ人(1)

繕い裁つ人(1)