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青猫文具箱

本と文房具を愛でる日々。

かわいいをつくってた頃の話。または借虎威女子という生き方。

割と小器用な方です。ずっと演劇をやっていて演じることに抵抗がないのもあり、その場で不足している役割を担うことができます。

具体的には、就活のグループ面接で、そのタイミングで需要がある役割を巧くこなすことができる。飲み会でも、話し手にも聞き手にも盛り上げ役にも回ることができる。

ただ、持久力はありません。あくまで短期間そういった立ち振る舞いができるというだけで、長期的には大雑把な普段の自分が出始めます。役者だって観客のいるステージから降りてしまえば、トイレにだって行くし悪態だってつきます。そもそも自分、裏方メインだったしね。

 

そんな感じで、高校デビューも大学デビューもそれなりのスタートを切った自分が失敗したのは、いわゆる社会人デビューというやつです。

その年の同期内で不足していたのは「妹系」のキャラらしく、それなりに機を見るに敏な自分は妹感を出して、なぜか同期内でもかわいがられるようなポジショニングをしてしまったのです。

それがそのまま研修期間を終え配属が決まってからも続きました。でもまぁこの頃はよかった。新人らしいかわいさで振る舞えば、どこでも彼処もお呼びがかかって、飲み会に呼んでもらえて顔を売れて、新しい話も聞けましたし。

 

一時は割り切って、猫かぶりどころか、虎の威を狩る狐のように、全身を「かわいい後輩」の皮で覆った頃もありました。ここで目指していたのは男性を意識した「コビ」系のかわいさでなくて、女性を意識した「モテ」系のかわいさです。

ナチュラルボーン(natural-born)、生まれつきのかわいさがない自分にできたことは、一般的にかわいいといわれる後輩像を継ぎ接ぎした人工皮を被ることでした。

つまり「借虎威女子」というやつです。

天然皮じゃないので長くは被ってられなくて、いつの日か化けの皮が剥がれることはわかってました。勘の良い人たちは早々に、天然皮ではない人工皮の不自然さに、気がついていたことでしょう。

 

はてさて私がそんな借虎威女子をやめるに至ったのは、初めての海外出張でした。

国内でもそうですが、海外での交渉時において、妹系のキャラクターが発する頼りなさとか甘さって、何のメリットもないんですよね。それまで散々メールでやりとりしてた相手担当からも本人か疑われるし。

知識で勝るとも思えない駐在員から不安視されたあたりで自分の中で何かがブチっと切れて「あ、もういいわ」と思ったのです。借虎威女子として生きることを。

そのときはひたすらねばり強く交渉を進めることで「君は見た目と違ってタフだね」といわせるに至り、そのまま借虎威女子の皮は置いてきました。

借虎威女子を卒業した瞬間です。

そうして四苦八苦、交渉をまとめて日本に戻って。でも完全に借虎威女子を卒業するまでには時間がかかりました。すでにイメージがついちゃってますしねー。

 

そんな感じで社会人デビューを失敗した自分にいえることは、何事も無理しないということです。特にありもしない後輩かわいい感を人工皮をまとってまで装うとか、かつて流行った「腰掛けで寿退社」を狙う以外はやるものじゃない。

アイドルだって年を取れば卒業して、女優や歌手やモデルに転身するんです。いわんや一般人をや。人間年を取ること前提で生きていかないと大変ですよ!と言う話。

 

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