青猫文具箱

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読み専が「小説家になろう」ランキング考察やってみた。

初心者はROMってろ(ROM=Read Only Member)ていうじゃないですか。だからROMったんですちゃんと。念には念を入れて3年間ほど。

3年超小説家になろう(なろう)で読み専やったし、そろそろ小声で考察なんかしちゃってもいいよね?ということで「なろうを3年ROMった自分の小説家になろうランキング考察」です。

目次

 

なろうランキングの仕組み。

なろうのランキング期間は、日間、週間、月間、四半期、年間、累計の6つ。総合の他、ジャンル別ランキングもあります。

小説を読もう! || 小説ランキング

ランキング順位は以下の計算式で決まります。

  1. ランキング順位=ポイント評価+ブックマーク件数×2pt
  2. ポイント評価=文法・文章評価5pt+ストーリー評価5pt、評価は上書き可
  3. ブックマーク:作品ごと設定、いつでも解除可

「この作品最高に面白い!」と思った人がポイント評価で両方満点、かつブックマークもした場合、5+5+1×2=12ptが入ります。これが1アカウントで出来る最高点。

実際には「面白かったけれど続き物なので評価なしのブックマークのみ」「感動したから評価はするけど読み返さないのでブックマークなし」「つまらん」など2~12点を振り分ける形です。

加点方式のため、「つまらん」と思って両方最低点をつけても1+1で2ptが入り、「面白かったけれど続き物なので評価なしのブックマークのみ」(1×2で2pt)と同評価になります。そのため、合わなかったらノーアクションが正解になります(それがどっちにとっても幸せ)。

日間ランキングのラスト300位が50pt前後なので、前日小説を投稿して12pt振り分けてくれる人が5人いれば60ptとなり、日間ランキングに載る可能性が高い。

 

評価、ブックマークを行えるのはアカウントを持っている人のみ。自身も作品を公開している作者のほか、もっぱら読むを専門にしてる自分のような読み専もここに入ります。

評価の客観性を期すため、自演が不可なのは勿論、対価を受け取って評価をつける、相互評価を依頼するといった行為も禁止されています。

 不正得点操作

下記に該当し、悪質であると判断した場合、運営側で然るべき処置を取らせていただきます。

  • 対価を受け取って評価をつける行為
  • 複数のアカウントを取得し、特定作品に評価をつける行為
  • クラックなどにより、不正に得点を操作する行為
【参考】評価システム|マニュアル

該当する禁止行為をした場合、運営からアカウントごと消されること(垢BAN)もあるのでそんなリスキーな橋を渡る作者はいない...といいんですが。パトロール隊やアンチによる身辺調査も各所で行われているので、人気が出てきたタイミングで過去の出来心が暴かれて垢BAN、なんて不幸もたまに起きます。

 

ランカーへの道。

ランキングに掲載される=ランカーになるための条件は、次のような方法がよく言及されます(前提条件が「面白い作品を書いている」なのはいうまでもありません)。

  1. 人気キーワードを小説に盛り込む:異世界転移、召喚、主人公最強などのテンプレ設定を盛り込み、キーワード流入を見込む。
  2. 毎日の定期更新:露出を増やし、読者の日参を促す。
  3. 他の作者、読者との交流:露出経路があれば作品の早期評価&ブックマーク獲得に繋がりやすい。

毎日の定期更新でなろうサイトのトップに載ることで「発見」されたり、キーワード検索経由でやってくる読者を上手く掴むことで、まずは日間ランキング上位を目指すのが常道です。

なろうは現在掲載作品数35万を超えるサイトのため、どんな作品もまずは見つからなければ話になりません。作者のお気に入り登録など基礎票がある分、なろう歴の長い作家ほどランキングしやすく、なろう歴が短い作家の場合は最初、運任せの傾向が強いです。

 

短編は露出機会が少なく、更新を追いかける必要もないため(=ブックマークの必要がない)、週間や月間のランキングで上位に来る難易度は高めです。ただ、お気に入りの作者を見つけるためまずは短編から読む人間も一定層いて(自分談)、名刺代わりの短編が1作あると作風が掴めてありがたかったり。

短編の使い方として、観測気球的に(長期連載前提のダイジェスト的な)短編を投稿する作者もいますが、ランキングや検索結果を二重で占めることになるので、ノイズとして嫌う読者も多いです。

 

また、作者はブックマーク解除させないため、読者のヘイト(ストレス的何か)を貯めない必要があります。そのため、シリアスな展開を短期間であっさり解決させる「短期的にはストレスなくて良いけれど全体として盛り上がりに欠ける」という展開が頻発することも。ネガティブな伏線張りがしづらいので、青春成長モノやミステリ書きさんにとっては本当、なろうは鬼門ですね。

上手い書籍化は、ここのヘイトをうまく調整(再構成)している印象です。みかみてれん先生のイサギとか。なろう版は1日1話×複数日で読むこと前提でヘイトを貯めない主人公TUEEEEのテンプレを踏んでたのですが、書籍版は...むにゃむにゃむにゃ(ネタバレ回避)。1冊の本前提の再構成がとても良かったー。

勇者イサギの魔王譚1 夢の始まりを始めるために

勇者イサギの魔王譚1 夢の始まりを始めるために

 

なろう内でチートが頻出する最大要因は「読者が求めているから書く」という以上に読者のヘイトを上げずに気持ちよく読んでもらう、そういう戦略なのですねー。

  

儚き夢「日間ブースト」

日間ランキングに掲載されれば、翌日には日間ランキングを住処にする読者が作品を読んでブックマーク(&たまに評価)してくので、後は坂を転がるボールのごとく点数が積みあがります。「ランキング掲載作品」というハロー効果も働くので。これを「日間ブースト」と呼んだりします。

日間ブーストで勢いが付いたら、あとは毎日更新です。せっかく日間ランキングに掲載されても、その後の定期更新で一見さんをお得意様に引き上げないと意味がありません。

読者はエタる作品に警戒しているので、ここら辺の見切りはとても早い。時間のリソースは有限ですしねー...無駄にしたくない。容赦なくブックマークを外していきます。そのため、読者がファンになるまで連続更新せねばならないのです。人気作家だと5千字前後の文章を毎日のように投稿します。おおう...。

後は、内容の面白さの度合いによって、週間ランキング、月間ランキング、四半期ランキングまで残ります。

小説本体が面白いことは当然の条件としても、なろうのシステムにあった戦略で戦わないと、見てもらうことさえ難しい。アメリカンドリーム的に「ちょっと思い浮かんだアイデアを小説にして投稿してみたら人気作家になってプロデビュー!」みたいなことは、早々起こらない儚い夢です。

ただ、これら条件を満たさない作品でも、ある日唐突に光を浴びることがあります。

 

名もなき「スコッパー」たちの発掘活動。

スコッパー。まだ見ぬ金脈(傑作)を目指し、スコップ片手に数多の小説群を掘り返しては嘆き、掘り返しては絶望し、掘り返して時折金粒(良作)を見つける人たちです。「なんか面白い小説読みたい」という呟きを聞きつけては見つけた良作を紹介し、名も告げずそっと宣伝していきます。

出没地点は、掲示板やブログ、TwitterをはじめとするSNSなど。彼らには、すでに宝石店に並んだ(書籍化された)、ランキングに載って手垢のついた作品群はあまり興味がありません。「この小説は俺が育てた」感こそ至高。過去、運とタイミングを逸して世に出なかった名作を探す人もいます。なかなかに不毛ですね。

スコップする方法として、定石はキーワード絞り込み検索ですが、自分がこれぞと思う作家のブックマークを辿ったり、古株スコッパーの推薦作と同作家の別作品を探したり。過去の作品を探したいときは、昔の完結済作にリンクを飛んで、その下の「この小説をブックマークしている人はこの小説も読んでいます!」から古い作品を捜し当てたりも。

自分も一時スコッパーとして名を上げたい!なんて浅はかな夢を抱いたこともありましたが、スコッパーほど老舗感が物を言う世界はありません。だって「あの人がいうなら間違いない」という過去に対する信用と、未来に対する信頼を兼ね備えたスコッパーの推薦作品ではないと、忙しい現代人は読んでくれないのです。

これきっと名作!と思ってそっとリンク貼ったのにスルーされて、その作品がやがて更新止まって涙流した日が何度あったことか。地雷原に足を踏み入れて、スコップが折れたことも何度もあったけども、最後に辞めたのは自分の意志でした。

そんな訳で、作家間交流やファンとの交流をしてない、一作目投稿である、割烹も書いてないのに人気が出たケースは、だいたいスコッパーの精です(誤字じゃない)。

自分のスコップが掘り出した作品がランキングに掲載され、書籍化に至ると、名もなきスコッパーたちは静かに祝杯をあげ、そしてすぐまた発掘作業に戻っていくのです。まだ誰も見ていない、新たな金脈(傑作)を目指して...。

 

無料プラットフォームが見せる夢

この記事、はてなブックマークとの類似点を意識して書きました。

ランキング掲載のアルゴリズムこそ違えど、話題になるキーワードが登場して、時には中身よりコミュ力高めのサイトやブログの方がホットエントリに上がってきて、新参より古参の方がブックマーカーとして信頼されて、...etc。

「小説家になろう」も、あまり評判の良くない評価方式だったり、昔の作品の検索しやすさだったりを改善すれば、10年選手な無料プラットフォームとして生きながらえていくんじゃないかしら、とかー。

 

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