青猫文具箱

青猫の好きなもの、行った場所、考えた事の記録。

史上最高に主人公な少女たちが活躍する小説、まとめました。

女主人公なライトノベル小説って、なんとなく恋愛寄せだったり、活躍するのは別に力のあるヒーローで、ほぼヒロインポジションで守られるのが、応援するのが仕事、みたいな作品、多くないですか。

体力的なものがあるのはわかってても、でも、女主人公が活躍するライトノベル見たいですよね。しかも恋愛なくても成立するぐらいがっつり、主人公して活躍する小説が。

そんな、史上最高に主人公な少女たちが活躍する小説、独断と偏見と様々なジャンルから選んでオススメしました。

 

クジラのソラ(作者:瀬尾つかさ)

私が知りうる、至上最高に主人公な女の子。

クジラのソラ01 (富士見ファンタジア文庫)

クジラのソラ01 (富士見ファンタジア文庫)

 

主人公チートもの流行ってるじゃないですか、俺TUEEEE系?クジラのソラの主人公・雫は、それとは真逆の主人公です。天才に囲まれた努力の人。才能を与えられず、自分の真横にスポットライトが当たる人。渦中にいながら必要な情報を隠され、ピエロのように踊らされる人。

でも、なんかですねー。主人公・雫は、私が知りうる史上最高に主人公な女の子です。打ちのめされて、這い上がって、口では悪態つきながら大切なモノたちと真っ向からやり合う、その生真面目さと健気さが最愛な主人公。

「異星人から提供された、国の威信と利権を賭けた艦隊バトルゲームの大会。その大会の優勝者であった兄を追って、大会優勝を目指す15の少女と周りのスペース・ファンタジー」。せっかくの女主人公、なのに恋愛のギミックすら用意されない。だけど4巻のシリーズ、終わってみれば天才どもは脇役で、どう考えたって雫が主役の物語です。この感無量感が凄い。

ちなみに号泣した雫の台詞、「一般人代表として、一般人を見下す天才様へ」。傲慢に聞こえるじゃないですか、でもね、幸せになれって祈りながら言うんですよ、この台詞

 

she & sea(作者: 糸森環)

異世界トリップ少女の、海と恋と成長の冒険譚。

she & sea 海賊王の退屈 (角川書店単行本)

she & sea 海賊王の退屈 (角川書店単行本)

 

オンライン小説発。異世界トリップ少女・笹良と、諦観した海賊王の巡り会い。

糸森先生の小説は、人物たちが戯れに交わす言葉遊びと、正統派なようで斜め上か下から攻める主人公の「いとをかし」さが大変に魅力だと思うんです。she&seaはその中でも一等、直感系生き物・笹良と、傲慢で横暴で諦念の海賊王の、じゃれあってるようで緊張の糸がピンと張ったやり取りが絶品。海賊船の仲間たちも愛着のある愉快さで、なのにふとした瞬間相容れなさを包含しているという切なさと恐ろしさ。

慣れない猫を飼ってるような、笹良の憎ら可愛さも愛でるべき要素ではありますが、実は真っ当に「異世界にトリップした少女が苦難を乗り越えて成長する少女小説」。あと海賊船生活での、海感が凄い。海の碧と潮の匂いに恋をする。続き全力待機です。

 

女王陛下の薔薇(作者: 三浦真奈美)

平凡な少女は平凡なまま、しなやかに世界を変えていく。

女王陛下の薔薇1 夢みる蕾たち (C★NOVELSファンタジア)

女王陛下の薔薇1 夢みる蕾たち (C★NOVELSファンタジア)

 

女は「家庭の天使」である時代、そのとおり良家の子女として生まれ育ち嫁いでいくはずだった少女が、ある不運をきっかけに、悩み自立し女王を支えるまでに成長する物語。

何がすごいって、おっとり控えめな「家庭の天使」のまま、女性的なしなやかさでもって苦難を乗り越え選択を重ね、古き慣習の男たちと渡り合ってく主人公エスティの生き様。可憐なピンクの薔薇が大輪の紅薔薇に、それでも薔薇は薔薇のまま、なエスティに、女王じゃなくてもこみ上げるものがあります。その最初から最後までを見守るヒーローも、味方のようで敵のよう、な立ち位置がたまらない。

彼女も親友の女王も、エスティのもう1人の親友とライバルも、4人それぞれに「女」として生きてく様に胸が締め付けられる。それぞれ、大きな選択をした「瞬間」が描かれてるのですが、挿絵もないのにその美しい後ろ姿が頭を過って、身震いします

ラスト直前、女王とエスティの秘密のお茶会的な語らいは、微笑ましくも可愛らしく、そしてどこか切なくて、自分的小説名場面のひとつです。というか、中盤の辛い展開を超えての親友たちの語らいに、気持ちが高ぶって涙が堪えきれない。

 

聖者の異端書(作者: 内田響子)

何気に逆ハーレムの先駆けじゃないか。

聖者の異端書 (C★NOVELSファンタジア)

聖者の異端書 (C★NOVELSファンタジア)

 

「弱きもの。汝の名は女。」から始まる、名も無き姫の冒険譚。

淡々とした「わたし」による一人語りを、小気味良いと感じるか地味と感じるかで、評価が分かれる作品。そして多分売れなかった。
でも私は相当好きです。設定も展開も登場人物も。物語の最後、ある登場人物のモノローグで締めくくられるのですが、含有する愛おしさにちょっと叫びだしたくなる。ファンタジー至上屈指のモノローグだと思ってます

皮肉屋なようでその実情が深く、あって数日の旦那様のために家を飛び出しちゃう一途な姫が、旅の途中で素敵な男性陣を引っ掛けてく逆ハー物語でもあります(読み返したら気づいた事実。)

 

銀盤カレイドスコープ(作者: 海原零)

女子にだって恋愛より大事なものがある、のですよ男子諸君。

佐々原史緒先生の「暴風ガールズファイト」もですが、"少女が恋愛以上にのめり込むものがある"シチュエーションが、真っ当に青春で好き。絵のポップな可愛さと、ジェットコースター系熱血スポ根具合の温度差が甚だしいです。読んだ人には定番の表現ですが「フィギュアスケートを文字で魅せる小説としては最高峰」に私も完全同意。

強気と弱さを兼ね備えたタズサと、完全なるフォロー力を携えた幽霊ピートの掛け合いも絶好調に楽しいんですよねー。日常とスケート本番直前での入れ替わる攻守とか強弱とか、何度萌えさすつもりなの、と再読のたびおののく。

タズサの毒舌高飛車っぷりと、結構シビアな環境が心臓に悪くて、導入は「あ、地雷?」感のある小説ですが、正直それはギミックなのでそのまま読み進めるがよろし。間違いないスポ根系鉄板の感動が待っています。

 

関連記事